"Cold War at Porton Down: Informed Consent in Britain’s Biological and Chemical Warfare Experiments". A History of Chemical Warfare,K. このような作用をする「タブン」は、塩素にくらべて100~1000倍も有毒であり、「マスタードガス」、「ホスゲン」、「ルイサイト」、あるいは「シアン化水素」に比べると10~100倍も強力で、ピンの頭ぐらい(数千分の1g)で致死量となる。 2)大木幸介:毒物雑学辞典-ヘビ毒から発ガン物質まで-;ブルーバックス,1984 3)Anthony T.Tu・編著:事件からみた毒-トリカブトからサリンまで-;化学同人,2001 4)Anthony T.Tu:中毒概論-毒の科学-;薬業時報社,1999 5)化学兵器による損傷の予防及び治療;The Medical Letter<日本語版>,18(1):1-5(2002.1.7.) 半数致死量 半数不能量 7 致死性(半数致死量)の比較 LCt50 (mg-min/m3) 神経剤 Nerve Agents マスタード Mustard ホスゲン Phosgene シアン化剤 Cyanide 塩素 Chlorine 15000-88000暴動鎮圧剤 … D. E. C. Corbridge "Phosphorus: An Outline of its Chemistry, Biochemistry, and Technology" 5th Edition Elsevier: Amsterdam 1995. Cambridge Quarterly of Healthcare Ethics (Cambridge Journals) 15 (4): 366–380, Tempest Publishing 編著 『初動要員のための 生物化学兵器ハンドブック』. 6)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療-;南江堂,2001, 全ての原稿・資料の著作権は著者又は作成者に帰属します。 無断での使用・配布は禁止します。 サリンは神経伝達物質のアセチルコリンと似た構造を持つ。 サリンはアセチルコリンを加水分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性部位に不可逆的に結合することで、AChEを失活させる。 それによりアセチルコリンの分解を阻害し、神経伝達を麻痺させる作用が働く 。 専門:医薬品情報管理学。消毒薬・毒薬等の調査。. サリン(ドイツ語: Sarin)は、有機リン化合物で神経ガスの一種[3]。別称はGB[4]、イソプロピルメチルフルオロホスホネートやメチルフルオロホスフィン酸イソプロピル[5]。, 化学兵器としてのサリンは、1938年にナチス・ドイツで開発された[6][7]。「サリン」の名称は、ナチスでサリン開発に携わったシュラーダー (Gerhard Schrader)、アンブローズ(Otto Ambros)、リッター (Gerhard Ritter)、フォン・デア・リンデ (Hans-Jürgen von der Linde) の名前から取られた[8]。ただし、サリンの化学式自体は、すでに1902年に公表されていた[7]。, 第二次世界大戦中のドイツにおける生産量は約1,000ポンド (450 kg)と推測されている[7]。第二次世界大戦末期、アドルフ・ヒトラーの側近でナチ・ドイツの宣伝大臣であったヨーゼフ・ゲッベルスは、化学兵器を実戦に投入することを主張した[7]。しかし、第一次世界大戦で毒ガスによって視神経や脳神経に一過性の障害を負い喉や眼を負傷したという経験を持つヒトラーは毒ガス使用には消極的であり[7]、またドイツ国防軍も化学兵器による攻撃は、連合国軍が神経ガスを保有しており、それを用いた報復ガス攻撃を招くと考えていた[7]。そのため、ドイツ国防軍がサリンを戦争に使用することはなかった[7]。サリンやタブン等の詳細な情報は、第二次世界大戦におけるドイツの敗北により、連合国側も把握するところとなった[7]。, サリンは神経伝達物質のアセチルコリンと似た構造を持つ。サリンはアセチルコリンを加水分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性部位に不可逆的に結合することで、AChEを失活させる。それによりアセチルコリンの分解を阻害し、神経伝達を麻痺させる作用が働く[14]。, 殺傷能力が非常に強く、吸収した量によっては数分で症状が現れる[15]。また、呼吸器系からだけでなく皮膚からも吸収されるため[16]、ガスマスクだけではなく対応する防護服を着用しなければ防護できない[4][17]。また、衣服や身体等に付着したサリンが再度気化し、二次被害を生じさせる場合があり、注意を要する[6]。, 経皮投与におけるヒトの半数致死量(LD50)は28 mg/kgであり[16]、体重60 kgのヒトが1,680 mg(約1.5 mL)の純粋なサリンを経皮吸収すると、その半数が死亡することを意味する。また、皮膚に一滴垂らすだけで確実に死に至るとの記述も存在する[14]。また、サリンは揮発性が高く、揮発度は16,100mg/m3[4]、気体比重は4.86となっており[16]、経気道的に吸入した場合のLD50は、70-100 mg.min/m3(推測中央値)となっている[4]。, 低濃度曝露の場合、以下のような症状が出る[6][18]。特に縮瞳が出現しやすいとされる[4]。, 日本においては、松本サリン事件と地下鉄サリン事件の二回にわたる惨事が引き起こされ、両事件で多数の患者が発生しているため、多数の患者に対する医学的な追跡調査が行われている。ただし、両事件では100以上の論文が発表されているものの、新たな知見は見出されなかった。これはすでに神経剤の臨床試験データが数百人分存在するからである。, 後遺症には、主に心的外傷後ストレス障害などの心的な物と、目がかすむ、身体がだるい、熱が出るなど軽微な物から、完全に身体を動かせないほどの重度な物までがある。身体的な後遺症の原因は中枢神経系や副交感神経の回復不能な損傷だと言われている。なお、地下鉄サリン事件で使用されたサリンは不純物が多く含まれているものであり、サリン以外の毒性も影響している可能性がある。, 松本サリン事件被害者に対する松本市地域包括医療協議会及び松本市による継続的な健康調査では、中毒者には事件後10年経過しても身体や目の倦怠感を訴えるものが非中毒者よりも有意に多かったが、20年経過時点では明確な後遺症は1名の確認にとどまった[19]。, 有機リン系農薬に見られる遅発神経障害(1~3週間以降)は起こらないとされる。これはサリンの急性毒性が高いために、ごく少量で中毒し、アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用が高い反面、神経毒エステラーゼ活性阻害作用はそれほど高くないことによる。, サリンは有機リン化合物であり、四面体形分子構造と4つの置換基を持つ[20]。光学異性体があり、Sp 体の方がアセチルコリンエステラーゼ結合作用が強く、生体毒性が高い[21][22]。, サリンの合成は、有機リン化合物合成における手法を通じて行われる。具体的には、メタノールと三塩化リンから亜リン酸トリメチルを合成し❲3CH3OH+PCl3→P(OCH3)3+3HCl❳、メチルホスホン酸ジメチルを経て❲P(OCH3)3+I2→CH3PO(OCH3)2+I2❳、メチルホスホン酸ジメチルと五塩化リンを反応させることによりメチルホスホン酸ジクロリドと塩化ホスホニルとクロロメタンを得て、メチルホスホン酸ジクロリドにフッ化ナトリウムを反応させることにより、メチルホスホニルジフルオリドと塩化ナトリウムが発生し、メチルホスホン酸ジメチルとメチルホスホニルジフルオリドとイソプロピルアルコールを反応させるとサリンとフッ化水素と水素が発生する。ただし、サリンそのものは反応性が高い上に漏洩した場合に非常に危険であることから、化学兵器砲弾や爆弾においてはメチルホスホニルジフルオリドとイソプロピル化合物を分離状態で同梱しておき、兵器として使用する時に混合する方法が用いられた(バイナリー兵器)[23][24]。オウム真理教の場合はこれとは異なり、あらかじめサリンを合成しておき、池田大作サリン襲撃未遂事件、松本サリン事件では貨物自動車を改造して設置した噴霧装置を用いて、滝本太郎弁護士サリン襲撃事件では遠沈管、地下鉄サリン事件ではサリンを有機溶剤に溶解させたものを袋に密閉し、穴をあけて染み出させることによる散布が行われた[25][26]。, しかし、サリンは合成過程における中間生成物の段階で既に極めて毒性が高く、廃棄物もまた高い毒性を持つ。さらに生成過程で使用される化学物質は腐食性も高くガラスを腐食させるので、通常のフラスコなどでは合成できず、高度に専門的な知識と技術、設備が必要となる。これら設備を持たない者が合成を試みたところで、その合成過程で負傷・死亡する危険性が高い。, 日本では、かつて長野県警察が市販の農薬からサリンの合成が可能であると主張していたが、これは完全に誤りである。確かにイソプロピルアルコールは工業原料・有機溶剤などとして一般に広く市販されており、前駆体であるリン塩化物についても法規制が敷かれているものの、化学工業や化学実験などで汎用される物質であることから入手が比較的容易なのは事実である。しかし、サリンは熱や水で容易に分解する上、合成段階では極めて不安定になる性質を持つため、サリンに至る製造工程では様々な化学用機材や高度な脱水技術のほか多段階の反応制御・精製技術・温度管理が必要であり、また多くの危険を伴う作業となる。上述した通り、オウム真理教もサリン製造にあたっては、それを目的とした研究室や大掛かりなサリンプラントを建造し、化学方面の高度な専門的知識に知悉した土谷正実らの信者が携わり、長谷川ケミカルなどのダミー会社を経由して原料を取得している。オウム真理教に対する査察においてオウム真理教の施設からは三塩化リン・フッ化ナトリウム(メチルホスホン酸ジメチル・メチルホスホン酸ジクロリドからメチルホスホン酸ジフルオリドを合成する段階で使用)などが発見され、それまではあくまで疑惑であったオウム真理教のサリン製造を裏付ける強力な物証となった。, 自然環境中には存在しない[27]。化学的に不安定な物質で、熱分解や加水分解されやすい[16]。加水分解によりフッ素が水分子の水素原子と結びつき、それが同じ水分子の水酸基と入れ替わることにより、サリンはフッ化水素とメチルホスホン酸イソプロピル(IMPA)に変化し、さらに後者はメチルホスホン酸(MPA)とイソプロピルアルコールに分解する[28][29][24]。したがって水源地や浄水場にサリンを投げ込んだところで直ちに加水分解されるほか、活性炭処理やオゾンによる高度浄水処理の工程を通ればほぼ完全に無毒化される。また、塩基性条件下で加水分解が加速されること[3]を利用して、サリンの除染には塩基性水溶液が用いられる[15]。, 自衛隊や警察、海上保安庁の対テロ訓練では、国際テロリストがサリンを散布して多数の死傷者が発生するといった状況が想定されていることが多い。北朝鮮も製造・所持をしている疑いがある[30][31]。北朝鮮は日本列島を攻撃可能な弾道ミサイルを保有しており、弾頭に化学兵器類を搭載して発射できるとされる。ただし、熱に弱い性質のサリンを大気圏再突入時に、熱の壁から防ぐ熱遮蔽技術が必要となる[32]。, 予防には可逆性アセチルコリンエステラーゼ阻害剤[4]が有効とされる。また、サリンにさらされた可能性がある場合には、サリンから離れて安全な空気のある場所に移動し、衣服を脱ぎ、洗眼や体の洗い流しをすることが求められる[6]。治療には抗コリン剤および抗痙攣剤として、硫酸アトロピンやプラリドキシムヨウ化メチル (PAM)が用いられる[4]。, サリンは化学兵器禁止条約(1997年発効)により、締約国は例外を除き、サリン等の生産、取得、保管、軍事的な使用が禁じられている[33]。例外として、化学兵器禁止機関に申告を行った上で、防護目的のために少量の生産・取得・保管が認められている[34]。, 日本ではオウム真理教による松本サリン事件(1994年)と地下鉄サリン事件(1995年)を受けて、サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成7年4月21日法律第78号)が1995年に施行された[35]。特別な許可を受けた場合を除き、サリンをはじめとする各種の毒ガスの合成や所持が禁止されており、サリン等を発散させ公共の危険を生じさせた者には未遂を含めて罰則が定められている[35]。さらに、化学兵器禁止条約を受けて、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律も1995年より施行(申告等手続等は1997年施行)されている[36]。, 陸上自衛隊化学学校(埼玉県さいたま市北区日進町、陸上自衛隊大宮駐屯地所在)では、日本では唯一、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律及び施行令により、人身防護を目的に複数の種類の毒ガスの製造が許可されている[37]。サリンも年間でグラム単位の合成を行っている[38]ほか、国際機関・化学兵器禁止機関(OPCW)の査察も受け入れている[39]。また、科学警察研究所でも経済産業大臣の許可を受け、試薬を輸入し、化学剤検知器のテスト等を行っている[40]。, Schmidt, Ulf (2006). マスタードガスは致死力がかなり弱く、死亡させるためには高濃度が必要である。 *第二次世界大戦中の英国で、8歳の男児が放置してあった処理済みの爆弾を悪戯して噴出したマスタードガスを浴びた。 びらん剤(マスタードガス)は,蒸気で作用するので,そ の致死濃度(LCt 50,単位はmg min/m 3)が毒性を表す. 1 分間暴露での半数致死に導く濃度(1m3 当たりの化学剤 量)が該当する.亜急性の生物毒素については,明確なエ 同じ神経ガスでもサリンはタブンより毒性が強い。 人間:人 間に対する致死量は動物のデータから推 測したものでTable 4に まとめた3,9,10)。これによれば 経肺ルートは毒ガスが気体の場合,ご く少量で殺す ことができ,皮 膚だと何十倍もの量が必要である。 copyright(c) Hideo Koizumi All Rights Reserved, 昭和38年昭和薬科大学卒業。 対象物:マスタードガス(mustard gas) 成 分:硫化ジクロルジエチル(dichlordiethyl sulfide)[(ClCH2CH2)2S]。, *硫化マスタード(sulfur mastard)。常温では無色無臭の液体。硫黄の代わりに窒素を使ったものもある。マスタードガスと呼ばれるのは、生成過程で不純物が混ざったものにからしの様な臭いのするものがあったため。生成、管理、輸送、使用に手間がかからないため、世界中で生産され、多くの戦争で使用されたが、基本的に禁止されてるため、その使用実体は不明なものが多い。 *マスタードガスは脂質親和性で、皮膚、大部分の布地及びゴムを容易に浸透する。DNA、RNAおよび蛋白質を不可逆的にアルキル化し、細胞を死滅させる。この化学反応は、湿度および温度依存性のため、湿度のある暖かい組織(粘膜、会陰、腋窩)は最も侵されやすい。 *マスタードは毛穴を有する哺乳動物の皮膚や衣類を容易に浸透する。マスタード50mgを軍靴の甲部に付けて30分間、あるいは100mgを底部に付けて60分間放置すると、皮膚に水疱が発現する。夏軍服の場合10mgで3分間、冬軍服の場合は10分間で水疱が発生する。 *マスタードガスの揮発性:630mg/m3、25℃における揮発度:920mg/m3。蒸発に要する時間(S):0.16、水に対する溶解度:0.05%。 別名:イペリット(yperit)、黄十字、H・HD・HT(米軍・略号)。, *糜爛性ガス(糜爛剤:blister agent)の代表。接触部分に糜爛を起こすガスであり、ガスマスクだけでは防げない毒ガスである。25℃における揮発度が低く、汚染物による危険が長時間続く。また症状の発現は遅発性で、中毒濃度での臭気は微弱なため、作用が潜行性に浸透し、かつ持続する。 *液体マスタードによる皮膚被爆は、皮膚表面(紅斑、痛み)から部分的下層(水疱)に至る熱傷を惹起し、稀に全層(深部水疱[deep bullae]、潰瘍)に至ることもある。皮膚が硫化マスタードに接触すると、数分から数時間遅れて痛みが発現する。マスタードガスの吸入では、粘膜糜爛及び気道閉塞を生じる可能性がある。液体マスタード又はマスタードガス被爆による眼作用は、眼の刺激及び結膜炎から、角膜熱傷及び失明までの範囲に及ぶ。高用量に被爆すると3-5日で骨髄抑制が始まり、約10日で最低値に達する白血球減少症を生じた後、血小板減少症及び時に貧血に至る。悪心及び嘔吐は、暴露後4-5日後に起こりやすく、下痢および出血を生じることがある *ヒトに対する毒性(致死量):経気道吸入1,500mg・min/m3(エロゾル)、経皮吸収10,000mg・min/m3。ヒトを行動不能にする濃度:100mg・min/m3。肺機能障害を来す濃度LC50:1,500mg/min/m3。マスタードガス使用時の致死率:2-3%又は1-5%の報告。液体が皮膚に1分間付着した場合の致死量:4000mg。, *皮膚に付着すると激しい炎症を引き起こし、激しい痛みと傷跡を残す。皮膚病変が治癒した後、色素沈着や脱色が残る。第二次世界大戦中製造に携わって汚染されたヒトでは、皮膚の白斑や褐色斑が30年後にも見られている。気管に入ったら呼吸できずに死亡することもあるが、致死率は低い。 *通常、マスタードガスに傷害されると、まず眼の痛み、喉の痛み、呼吸困難、嘔吐などの症状が発現する。皮膚と2分間接触すると吸収され、痒みを感じる。2-6時間くらい経つと皮膚が赤くなり、12-24時間で水疱が生じ、酷い痛みを伴う。水疱はやがて消失するが、皮膚は酷い火傷の後のような状態になる。マスタードガスは致死力がかなり弱く、死亡させるためには高濃度が必要である。 *第二次世界大戦中の英国で、8歳の男児が放置してあった処理済みの爆弾を悪戯して噴出したマスタードガスを浴びた。帰宅後衣服を脱ぎ、体を洗ったが、2時間後に嘔吐と眼の痛みが始まり、12日目白血球減少(200/mm3)と呼吸不全で死亡した。居間にいた家族4人も、翌朝には重症の結膜炎を起こし、同じ部屋で寝た兄は四肢に水疱形成を見た。帰宅時に別の部屋で寝ていた兄弟3人も1週間後、気管支炎を惹起した。, *マスタードを皮膚に塗布した場合の症状発現と発現時間 浮腫                              2-3時間 水疱発生                          12-14時間 水疱破壊・糜爛面露出               約10日 壊死組織剥離、新鮮肉芽面           約20日 表皮新生-治癒                      約40-50日, *マスタードの吸入は防毒マスクで防げるが、皮膚障害は防げない。衣類や手袋、靴は皮膚を当初保護するが、普通の衣類は数分で浸透する。汚染された衣類、持ち物一切は屋外に出す。汚染物質の処理と体の洗浄は極めて重要である。イランのマスタード中毒患者を受け入れたヨーロッパの病院で、二次災害が起きている。 *通常、脱脂綿などでよく吸い取った後、灯油などの有機溶剤で洗浄し、その後、石鹸と流水で洗う。15分以内に処置する必要がある。5分以内であれば、殆ど障害を残さない。その後0.05%-次亜塩素酸ナトリウムで洗う。次亜塩素酸は除毒効果はないが、消毒作用がある。 *千葉県銚子沖で操業中に被曝した漁船員の治療を受け持った銚子市立病院では大豆油で創傷部位を拭いては晒し粉を付けていたというが、晒し粉では刺激が強すぎるとする報告が見られる。 *眼に入ったときには、アルカリの場合に準じて十分洗浄する。曝露後5分以内でなければ意味がない。その後滅菌ワセリンあるいは抗生物質軟膏を使用する。虹彩の癒着を防ぐため、散瞳剤を点眼する。 *皮膚病変に対しては、カラミンローション、スルファジアジン銀を使用する。ポビドンヨードゲルが効果的であるとする報告も見られる。II度の熱傷に準じた処置をするが、熱傷との相違は、輸液量が大幅に少なくてよいことである。 *米国の兵士は戦場に赴くとき、対マスタードガス救急薬としてサルブス(Salves:軟膏)を携帯する。皮膚に水疱を生じた場合、劇痛を伴う。その劇痛を軽減するのが目的である。眼はマスタードガス対しては特に弱く、眼が侵されたときは速やかに生理食塩水、2%-ホウ酸水溶液、2%-チオ硫酸ソーダ溶液で洗浄する。マスタードガスは皮膚を侵すので、汚染された着物をすぐに脱ぎ捨てることが大切で、冷水シャワーで皮膚に付いたマスタードガスを除くことも大切である。, マスタードは皮膚、眼、及び気道と反応して化学的損傷を、一方骨髄と反応して汎血球減少症を引き起こす。迅速な汚染物の除去及び適切な薬剤による治療が有用である。 *硫化マスタードに被爆した患者は、素早く衣服を取り除き、直ちに石鹸および水で洗い流す。気道上皮が浸食された場合は、気管内挿管が必要である。化学的損傷は高温熱傷よりも体液の損失が少ないため過度の水分補給は避けるべきである。マスタード損傷は特に疼痛を伴うため、十分量のオピオイド系鎮痛薬を投与する必要がある。重症の損傷には、一般に洗浄法、壊死組織切除及び1%-スルファジアジン銀のような局所抗菌薬が必要となる。 *眼の治療には、洗浄、局所抗菌薬及び調節麻痺性縮瞳改善薬投与を行う。瞼の損傷は、ワセリンを塗布することで刺痛から保護することができる。マスタードによる好中球減少症は、顆粒球コロニー増生因子又はフィルグラスチム (filgrastim)により治療することができる。, イープルの戦い(Battles of Ypres) *フランスのイーブルで行われた第一次世界大戦の3回の戦い(1914.10.12.-22.)では、独逸軍の“海への進軍”を阻止したイギリス軍に50,000人以上の戦死者がでた。2回目(1915.4.22.-5.25.)は、イープルの突出部でのドイツ支配を打ち崩すことができなかった。イギリス軍59,000人が戦死した。3回目(1917.7.31.-11.4.)は、イギリス軍の攻撃で、連合軍が突出部の大部分を奪回した。245,000人のイギリス兵が死んだ [大百科-丸善エンサイクロペディア;株式会社丸善,1995]。 *マスタードガスは第一次世界大戦中、独逸軍がベルギ-のイープル(イペルン)で初めて使用した毒ガスで、大量殺戮兵器の幕を開いた。マスタードガスは農薬開発の過程で誕生したといわれている。最初に使用された地名をとって「イペリット」ともいう。当初は有機溶媒に溶かしてボンベからガス状にして噴霧されたが、後には砲弾の内部に詰めて発射した。ベルギーなどの使用地域では、現在でもその回収作業が進められている。 *イープルの塩素ガス戦から2年後の1917年独逸軍の毒ガス弾がイープルに落とされた。独逸軍では“黄十字”と呼ばれたが、臭いを嗅いだイギリス軍は、芥子臭から“マスタードガス(芥子ガス)”呼んだ。これが一般にはイープルの地名に因んで“イペリット”といわれる悪名高い毒ガスである。, *兵器として人類史上初めて使用された毒ガスは、ペロポネソス戦争でスパルタ軍が使用した亜硫酸ガスであるといわれている。近代以降では、1915年4月22日、第一次世界大戦のイープル戦線で独逸軍が使用した塩素ガスが最初である。 *患者の処置による院内及び病院職員の二次汚染を回避する措置が必要である。 ①通常患者等が使用する廊下等を使用せず、直接入室可能な急患室。あるいは二次汚染を拡大しない患者搬入の仕組み。 ②防毒マスク及び防御服の着用。, 1)http://www.netlaputa.ne.jp/~kitsch/taisho/jikoh/musgas.htm,2004.3.29.