米国大統領選挙での敗者は、ヒラリー・クリントン氏だけではない。全米の世論調査担当者もそうだ。ごくわずかな例外はあるが、ほとんどの世論調査がクリントン氏優勢と報じていたことは皆が知っている。世論調査の外れ方はランダムではなく、同一の方向だったこともあり、これまでに確立された統計手法の信頼性が大きく揺らいでいる。, 2012年米大統領選挙で全50州の勝者を的中させたことで信頼を勝ち取った世論調査サイト“FiveThirtyEight”(大統領選挙人総数の538にちなむ)などで行われている大統領選の結果分析を見ると、今回の選挙の特徴として、「誰に投票するか未決定」と答える有権者が非常に多かったことが、世論調査を誤らせた一因であるようだ。投票日直前まで未決定と答えるのは、通常3%程度であるところ、今回は12%を超えていたという。未決定が3%であれば仮にクリントン氏4:トランプ氏6で投票したとしても、全体ではネットでトランプ氏に0.6%上乗せするだけだが、未決定が12%なら2.4%の上乗せとなる。2.4%の差異は、勝敗を覆す可能性が十分だ。よく言われる通り、「隠れトランプ支持者」が相当いたからこそ、今回の一見意外な結果につながったとの分析だ。とはいえ、未決定と答えた有権者が共和党候補、民主党候補のどちらにどれだけ投票するかは、なかなかつかみ難いのも事実だ。, しかし、この「隠れトランプ支持者」仮説には、疑問が呈されている。実際の投票でのトランプ氏支持が世論調査を大きく上回ったのは、もともとトランプ氏優位な州が多く、そのような場所で暮らしていればトランプ氏支持を隠す理由はないはずだ。また、世論調査に対して真意を隠すのは、若年の高学歴層が多いという経験則に従えば、マサチューセッツ州やニューヨーク州といった高学歴層が多い州で、トランプ氏の得票が大きく伸びるはずだが、そうなっていない。世論調査の誤りは、共和党支持層の大きさを過小評価したことと、共和党支持層内でのトランプ氏支持率を低く見積もるという、ありがちなミスが重なったからだという指摘もある。, 世論調査が特に大きく外したと考えられているのが、ヒスパニック系の中でのクリントン氏支持率だ。投票前の調査によるとクリントン氏は前回のオバマ大統領再選時よりも、ヒスパニック系から強く支持されていると言われていたが、どうもこれが不明確なようだ。出口調査の結果でもトランプ氏が予想以上に票を得たとの調査もあるし、有権者に占めるヒスパニック系比率が9割を超える地区の開票結果を見ると、クリントン氏は前回のオバマ氏よりも10%ポイント程度票を失っているところがあるという。人口が急増しているヒスパニック系の動向を捉えられなかったことは、今後の世論調査の信頼性にも関わる問題だ。, 一方、クリントン氏の選挙対策本部では、投票日の直前にFBIによってeメール問題が蒸し返されて、クリントン氏支持への熱意が削がれたことが敗因であると分析している。FBIの調査再開声明以来、世論調査ではトランプ氏の勝利確率を上げてきたが、クリントン氏優位の判断は維持された。世論調査はeメール問題の影響を過小評価していたのかもしれない。, ところで、実は世論調査は当たっており、確率的表現の読み方を知らない人が外れたと騒いでいるだけという言い方も可能だ。選挙終盤で、例えばFiveThirtyEightでは、クリントン氏71.4%:トランプ氏28.6%、ニューヨーク・タイムズは、同85%:同15%と、トランプ氏勝利の余地を残した予想だった。考えようによっては、かなり大きな可能性を世論調査は認めていたということだ。もっとも、98.2%でクリントン氏勝利と予想した世論調査もあるし、やはり外したという印象は動かし難く思える。, このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。, 2016米大統領選:世論調査はなぜ外したか—「隠れトランプ支持者」仮説にも疑いが—, 各種コンサルティング、システムソリューションなど事業・ソリューションに関するお問い合わせ、ご相談. コラム 『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは? 2016年の大統領選でドナルド・トランプの勝利を予測した唯一の男、アラン・リクトマン教授にインタビューした。彼は1984年から現在まで9回の大統領選の勝者をすべて的中させてきたので「大統領選のノストラダムス」とまで呼ばれている。, 2016年は投票日の夕方まで、ありとあらゆるメディアや評論家がヒラリー・クリントンの勝利を予想していた。世論調査に基づいていたからだ。ところが蓋を開けてみると、世論調査ではヒラリーが勝っていたミシガンやウィスコンシンなど五大湖地方のいわゆるラストベルト(錆びついた工業地帯)が全部トランプに転んだのだ。, 「世論調査なんてものは、その瞬間を捉えただけのスナップショットにすぎません。だから私はもっと大きな視点からの予測システムを開発したんです」, 歴史家であるリクトマン教授は、1860年から120年間の大統領選を精査して、現職の大統領か与党が勝つ時と、負ける時の共通点をチェックしていった。それをまとめたのが「ホワイトハウスへの13の鍵」というシステム。, まず1の鍵。「与党の支配。与党が下院議会を多数支配しているか?」2018年の中間選挙で共和党は36議席を失って民主党に過半数を支配された。よって答えはノー。, 3の鍵。「与党の候補者は現職の大統領か?」前回のヒラリーはそうでなかったのでノーになったが、今回のトランプはイエス。, 4の鍵。「集票力のある第3党がいない」ラッパーのカニエ・ウェストが出馬したけど、誰にも相手にされてないようなので、イエス。, 5の鍵。「短期経済は好調か?」ノー。選挙期間中(投票日前の3ヶ月間)、不況になってないか? コロナのせいで旅行、小売、飲食、娯楽、衣料など多くの業界が大打撃をこうむり、失業者は616万人。, ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号6091713号)です。, 三浦春馬さん最後の出演ドラマ『カネ恋』シナリオブックで明かされた“本当の結末”と“4話完結の秘密”, 「現政権では“韓日のwin-win”は不可能」韓国元陸軍中将が告白した「いま文在寅が怖がっているモノ」とは?, 「彼はとことん自分に甘い」元TOKIO山口達也の“苦しい日々” 豪邸を手放し、わびしい単身生活, 善逸くんが堂々1位…『鬼滅」キャラランキングに見る今ドキの理想の「男の子」「悪役」とは, 「もう事件を追及しないでください」骨膜まで顔を切りつけられた美男子スターが捜査ストップを懇願した理由, 《ハンドボール宮崎大輔・逮捕は不倫旅行中》元新体操恋人が親友に語った「奥さんには何も言われていない」「同じ布団は使いたくない」, 「娘は泣きながら電話を」ハンドボール宮崎大輔逮捕 恋人・深瀬菜月(26)母が明かした《不倫、酒、暴行事件》, 嵐・相葉雅紀は実は安泰。先行きが心配されている“意外なメンバー”とは?《嵐フェストラブルも影響》, 月3万~4万円の収入で「辞める選択肢しかなかった」…ディズニーランド元ダンサーの失望, NEXCOは調査指示「鉄筋不足で崩落の恐れ」中央自動車道の手抜き工事を下請け会社が実名告発, いいお話では物足りない…『ポツンと一軒家』からいつの間にか「失われたもの」――青木るえか「テレビ健康診断」, 「春田と牧のプロポーズを超える新作を……」『おっさんずラブ』Pが明かす“「-in the sky-」誕生秘話”, 中尾彬さん、池波志乃さんと考える「家族への想いをカタチに ~遺言書にやさしさをこめて~」相続オンラインセミナー, 感染症を防ぐキーワードは「粘膜免疫」と「IgA抗体」。そこで、大きな期待を集めている「乳酸菌」とは?, 「萌子さんって結婚願望あるんかな?」3代目バチェラー・友永夫妻が『バチェロレッテ・ジャパン』を語りつくす, 《緊急アンケート》大ヒットアニメ「鬼滅の刃」あなたが好きなキャラクター、好きなシーンは?, 好評開催中! オールタイム「もう一度やりたい!プレステゲーム」アンケート 中間発表!, 「泣いたのは初めてです…」“世界一貧しい大統領”ホセ・ムヒカ85歳の言葉に日本人通訳が嗚咽した日, 2度も誘拐された少女の両親は、犯人に性的に籠絡されていた……全米を驚愕させた事件とは, 「相手の話をきく約束ですよ。いいですね?」「だって…」「理由を聞いたんじゃありません!」米国大統領選挙の討論会でトランプが見せた“駄々っ子”ぶり. 2016年の選挙では10月22日調査でヒラリー50%、トランプ38%と今回のバイデン52%、トランプ43%よりも差がありました。 Copyright © Daiwa Institute of Research Holdings Ltd. All Rights Reserved. 2016年の大統領選でドナルド・トランプの勝利を予測した唯一の男、アラン・リクトマン教授にインタビューした。彼は1984年から現在まで9回の大統領選の勝者をすべて的中させてきたので「大統領選のノストラ… コラム. 2016米大統領選:世論調査はなぜ外したか—「隠れトランプ支持者」仮説にも疑いが— 2006年12月14日. 2016年11月28日.